中国のバブルは弾けるか 2021.10.5

○中国のバブルは弾けるか 2021.10.5

中国がこれまで国有企業と国家の経済戦略上重要な民間企業には、ある程度のモラルハザードが許容されてきた。
借金頼みの高リスクなど心配無用。金策に困れば政府が助けてくれる。国内外の富裕層がこれを暗黙のルールとして投資を行ってきた。
国有企業3社(永煤集団/石炭大手・華晨汽車集団/自動車大手・紫光集団/半導体大手)の3社が経営難に陥っても中国当局はデフォルトを防ごうとしなかった。中国政府にはもはや債務爆弾を防ぐ気は無い。よほど重要な企業でない限り、救いの手を差し伸べない。
華融:不良債権処理を専門とする国有会社
77億ドルの救済策がまとまり複合企業の中信集団等の国有企業が華融に資本を注入することになった。
中国第二の不動産開発大手恒大集団は世界で最も多くの借金を抱えた不動産開発会社。社債を発行し急成長したが、中国の不動産市場の長期的な減速にパンデミックの発生が追い打ちをかけ、その壮大な空中楼閣が崩れ始めた。
資金調達が困難になると納入業者への支払遅滞、恒大はデフォルトの危機に追い込まれた。
中国当局は破綻回避のためEV事業など副業のベンチャーを含む資産の売却を経営陣に命じた。
さらに当局は救済こそしないものの恒大が銀行等の債権者との利払いと元本の支払期限で再交渉を行うことを認めた。1年以内に返済期限を迎える債務は520億ドル。今のところ資産の叩き売りの成果もぱっとしない。EV事業などの目玉商品はまだ売れていない。潜在的な買い手はデフォルトになって価格が二束三文になるのを待っている。
恒大は事業の性質や負債の規模などで華融とは異なり、「大きすぎて潰せない」わけではなさそう。
注視すべきは、中国政府が今年の経済政策の主要な課題としてデレバレッジ(過剰債務削減)とリスク回避を掲げていること。
感染拡大が比較的落ち着いて特に20年は信用取引の拡大が顕著だったことから、デレバレッジ戦略が再び強化されつつある。政府としては特に不動産業界の過剰債務を削減したい。そこで昨年、不動産開発業者に財務改善を要求するスリーレッドラインが設定された。これは持続的な成長を確保するために手元資金に対して保有できる負債の上限を設ける。
具体的には資本負債比率70%以下、純資本負債比率100%以下、現預金の短期有利子負債比率100%以上、と言う指標を定めこれらの年間増加率15%以下に制限される。レッドラインを1つでも超える企業は新規借り入れができない。恒大は3つすべてを満たしていない。華融の2380億ドルを上回る3000億ドル以上という恒大の負債の大きさも救済の可能性を薄めている。
証券会社や格付会社は恒大がデフォルトを回避できそうにないと見ている。恒大が完全に破綻すれば中国経済に波及する可能性がある。中国では現在家計資産の8割が住宅関連に集中している。不動産バブルがはじけてこれらの資産が消失するような事態は政府としては避けたい。恒大の負担は不動産の価値に悪影響及ぼし、消費者の富に打撃を与え、特に消費・投資の減速につながりかねない。企業がデフォルトに陥った場合、中国政府がかねて示しているとおり、債券保有者は救済措置の優先順位が最も低い。

 

バブル崩壊中国政府の着地点2021.10.5
中国は基本的に社会主義経済なので、仮にバブルが崩壊しても、場合によっては民間企業は救済せず国有企業を救済する折衷型の処理となる可能性が高い。
恒大集団が経営機域・過剰債務の状態に陥っており、資金繰りが厳しくなっている。
本社には理財商品(中国の金融商品)の償還を求める投資家が押しかける混乱を生じている。
中国の不動産バブルは80年代日本のバブル経済とよく似ている。バブル崩壊の引き金となったのは土地の総量規制など政府による引き締め策。中国当局もこれに近い政策実施している。習近平政権は「共同富裕」の方針を示し、大企業や富裕層に対して富の再分配を強く要請した。最終的には不動産税や相続税の導入も検討しており、意図的に不動産取引を抑制しようという意図が感じられる。
リーマンショックなどの過去の経験則から経済圏における総融資残高のGDPの1.7倍を超えると危険水準。中国の社会融資総量は 2.2倍でかなりの危険水準である。一部では資金回収が進んでいる様子がうかがえるが、一方で融資残高増加が続いており不良債権が顕在化すれば一部が回収不能となりえる。

タリバン復権が台湾に与えた鈍い衝撃 2021.9.24

タリバンの攻勢を前にあっけなく崩壊した親米政権の惨めな姿は、アメリカの同盟国や有邦とのあいだで交わした約束の実効性に疑問を生むものだった。

アメリカは台湾防衛に対する承諾事項を守るのか?

2021.3の2プラス2で台湾海峡の平和と安定の重要性を明記し、台湾有事に対する懸念を示した。2021.4日米共同声明の中でも約半世紀ぶりに台湾海峡に言及したことで、台湾有事の可能性がさらに現実味を持って語られるようになった。

しかし当事者の台湾現地ではさほど切迫した危機感等は感じられなかった。中国の台湾に対する政治や経済軍事の各方面での圧力が強まっている。しかし台湾住民の感覚はある種、麻痺状態に陥っており、台湾有事

を日常的に意識することはなかった。1996年に中国側が台湾側への牽制を目的にミサイル発射練習を実施したことで、外部で台湾言う事に関する懸念が高まるも、との台湾内部は平静だったことを想起させる。

 

南西諸島 進む軍事要塞日に抗う住民 2021.9.24

南西諸島では対中国戦略としてミサイル部隊を主とする自衛隊配備計画が進む。アメリカの対中戦略に沿った台湾有事の先導として展開してきたもの。新しいアメリカ戦略構想は「海洋プレッシャー戦略」

第一列島線(九州沖縄台湾フィリピン):米軍と自衛隊からなるミサイル部隊と、第二列島線(本州グアムパプアニューギニア)沿いに退避するアメリカ海軍空母機動部隊の二段構えの布陣。

台湾有事の場合南西諸島配備の自衛隊が米軍ととも第一列島線に展開。通過しようとする中国鑑艦艇をミサイル攻撃で封じ込める。第二列島線の米軍部隊は中国の中距離ミサイルが届かない地点から自国や同盟国の部隊を支援する作戦。

アメリカは米本土に戦火を及ばさない限定戦争を想定している。

最前線の日本(自衛隊)はやられ役だ。戦場となる南西諸島では中国のミサイルも後に沖縄戦時のような住民が逃げ惑う事態が懸念される。

南西諸島への自衛隊配備は、2016年の与那国島への監視警戒部隊を皮切りに、ミサイル部隊が奄美大島宮古島石垣島の島々に設置計画された。

馬毛島ではアメリカ空母艦載機の離着陸訓練移転と陸海空自衛隊の一大訓練計画が同時進行している。また陸上自衛隊の勝連分屯地(うるま市)にミサイル部隊を配備する方針が防衛省から地元に通告された。

韓国SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)が開くミサイル危機の時代 2021.9.28

SLBM北朝鮮の脅威に対する確実の抑止力になると4人を述べている。北朝鮮の金与正朝鮮労働党副部長が韓国のミサイル発射実験と文在寅の発言を受けて、「南北関係を完全に破壊するリスクを犯している」と警告した。
朝鮮半島情勢の不要な悪化を防ぎ、北東アジア諸国潜在的懸念を和らげるため、アメリカは同盟の条件として、韓国が開発可能のミサイルの射程や弾頭重量に制限を課していた。だが北朝鮮が事実上の核保有国になり、ミサイル技術を向上させる中で制限は段階的に緩和され、今や韓国はアメリカの制約なしに弾道ミサイルを開発できる。

9.11テロとアルカイダとサウジの影 2021.9.28

FBIはサウジアラビア政府が9.11テロの実行犯を支援した可能性に関する資料の開示した。アメリカで活動するサウジの情報部員らしき人物3人が事件の前年、ハイジャック犯2人と繰り返し接触していた。サウジ政府がテロに関与していた、あるいは計画に事前計画を事前に知っていたことを示す直接的な証拠は無い。サウジ政府はこの主張を全面的に否定。ビンラディンアメリカよりもサウジ政府に敵意を持っていた。サウジ政府の反論はおそらく真実だ。サウジがアメリカに対するテロ活動支援しても得るものはなく、失うものが大きい。それでも2002年アメリカの情報機関員の証言によれば、「サウジの治安機関の内部にアルカイダのシンパや過激派がいる可能性は高い」。開示された捜査資料はそれを裏付けた。

暴君からアメリカを守れ 2021.9.28

○暴君からアメリカを守れ 2021.9.28
トランプ大統領の支持者が連邦議会議事堂を襲撃した後、マーク・ミリーが核兵器の発射手順を見直すため高官を招集していた。ミリーは自分がシュレジンジャーの役を引き受けていると語った。ニクソン大統領が弾劾訴追される可能性が濃厚になると、国防長官だったシュレジンジャーは統合参謀本部議長のブラウンに、「ホワイトハウスから異例の指示が出たらまず自分に相談するよう」伝えていた。ミリーは「自分が関与していない限り、誰からの命令も受けるな」と指示した。公式に定められた手順でも大統領が核兵器の発射ボタンを押す前に統合参謀本部議長に相談するよう義務付けられている。ミリーはその立場にあることをはっきりさせようとした。
だが、ミリーの行動は74年にシュレジンジャーとブラウン行ったこととは違う。ブラウンは各軍司令部の大将すべてに「自分とシュレジンジャーの確認を経ない限り、ニクソンからの実行命令には従わないよう」命じていた。これは命令への不服従。ただ愛国心に基づいたものであり、当時の状況下では正当と認められる不服従だった。
一方でミリーの行為は統合参謀本部議長としては大胆だったが、単に手順の遵守を徹底させたさせたかっただけであり、不服従と言えるものではない。

②トランプが正気を失い中国を攻撃するのではないかと懸念したミリーは、核兵器を扱う高官らを招集したのと同じ頃、中国の李作成統合参謀本部参謀長に非公式ルートで電話をかけに2点を確約していた。第一に、ミリーはまず暴動が起きたか否かにかかわらず、「アメリカは100%安定しており、万事問題ない」と李作成に伝えた。
第二に、「アメリカは中国を攻撃するつもりはないがもし攻撃する場合は事前に連絡する。奇襲攻撃はしない」と約束した。
これは事実なら歴史上前例がない衝撃。
ミリーは指揮系統から逸脱し最高司令官 =大統領の方針や意向として自分が受け取ったことを無視すると断言したのだ。さらに大統領が攻撃を命じたら敵の最高司令官に連絡すると約束し奇襲攻撃の利点を自国から奪った。

米軍の最高幹部が今回のミリーのような方法で特定の攻撃への反対や回避行動をとることは望ましいか?
民主主義と指揮系統を重視するなら、ミリーは国防総省国務省など各組織の文民職員を集めてグループを設け、そこから攻撃に反対の声をあげるべきだった。
中国との極秘ルートを開設したのミリーではなくマーク・エスパー国防長官だった。エスパーの狙いはアメリカの攻撃が差し迫っていると見ていた中国を安心させることだった。
ミリーの会話内容は、「もし戦争になる場合にも奇襲攻撃を行わずそちらも先制攻撃を行う理由もない」というもの。これなら奇襲攻撃について中国に事前計画を約束したことにはならない。

大統領はどれだけの権限を権力を持つべきなのか?
大統領が職務遂行能力を失った場合について定めた憲法修正25条の規定を発動するか、少なくとも発動を真剣に検討すべきだった。アメリカ大統領は核攻撃の開始について独占的な権限を持つが、これは大統領は正気だという前提に基づいている。
だがこの前提は憲法の精神に合致していない。アメリカの建国の父たちは連邦政府に立法・行政・司法の3部門を設け、各部門にある程度の拒否権を与えた。やがて大統領に専制君主が選出される事態を恐れたからだ。

AUKUSをめぐる各国の思惑

○AUKUSはブレないバイデンの証し2021.10.21

インドと中国の国境地帯では昨年来、両軍が衝突している。南シナ海では国際社会が公海とみなす海域や、ブルネイベトナム、台湾、フィリピン、インドネシアなどの経済水域の領有権を中国海軍が虎視眈々と狙っている。インド太平洋地域の価格は今後「中国と組むかアメリカの組むか」という究極の選択を迫られる。

不意打ちを喰らったマクロンは、大統領選を来年4月に控えたタイミングで、大口雇用を生む巨額の契約を失った。フランス海軍は太平洋一帯で航行の自由作戦を定期的に実施しており、AUKUSはフランスの対中戦略を損なうものだ。

バイデン政権の包括的なインド太平洋戦略においてはフランスの怒りは大した問題では無い。バイデン大統領は就任以来中国に対抗する戦略を相次いで繰り返しておりAUKUSもその一つに位置づけられる。

 

 

○AUKUSへのオーストラリアの言い分2021.10.5

AUKUSには技術的リスクと政治的リスクに絡む問題が存在する。重要なのは2つを混同しないこと。

①技術的に見ればオーストラリアの目的に最も適しているの原子力潜水艦潜水艦だとの主張には強い説得力がある。一方オーストラリアにとってはより小型で低騒音で機動性の高い通常動力型の潜水艦を大幅増常備する方が総合的な利益になるのではどの意見もある。

原子力潜水艦には核拡散と安全面のリスクがあるが、反対にオーストラリア世論は核武装をせず全ての国内政党がその可能性を除外している。

②政治的リスク。フランスとの対立の副産物、オーストラリアの大幅な能力向上が地域に与える影響、アメリカとの新たな関係にによって独立性が損なわれるのではないか、対中関係の大幅な悪化を招くだけではないかと言う懸念。

原子力潜水艦の技術供与を始めとするAUKUSUKの防衛プログラムは、ある国の敵意への対抗措置ではなく、地域内各地で起き得る将来的脅威へのオーストラリアの反応能力を強化するものとして捉えられ、受け入れられるべきだ。

言うまでもなく中国はAUKUSの創設発表に否定的な反応を見せた。とは言え米豪の安全保障関係を不動のものと位置づける中国にとって、今回の発表大きな驚きはない。自国の国益にかなうなら鉄鉱石輸入などの形でオーストラリアと取引することもいとわないはずだ。AUKUSはオーストラリアがついに反中陣営に加わったことを意味しない。

 

 

○バイデンの外交次第に中国は高笑いする2021.10.5

AUKUSをめぐりアメリカはフランスの怒りを買った。米英がオーストラリアに原子力潜水艦技術を提供することになり、オーストラリア政府がフランスとの潜水艦建造契約を破棄した。

バイデン政権にとってAUKUS発足は中国への牽制と言う意味で大きな成果だ。

フランスにとって潜水艦12席を売り損なうことは決定的な違いとまでは言えない。バイデン政権が犯した過ちはフランスの心情への外交的配慮を怠ったことだ。

フランスはドゴール大統領の時代からずっと、アメリカがインドシナ地域に首を突っ込まないよう釘を刺し、アングロサクソン諸国が同盟を組んでフランスを一方的に排除することを恐れていた。

インド太平洋地域にいくつかの島と軍事基地を保有するフランスは、自国をこの地域のプレイヤーとして位置づけており、米中対立の緩衝材になり得る存在だと考えていた。しかしアメリカがこの地域でフランス冷淡に締め出しEUから出て行ったばかりのイギリスと一緒になって行動しようとするのには、フランスにしてみれば侮辱的。

マクロンメルケルが退任した後の自由世界のリーダーを自認していてアメリカが世界への関与を弱める中で、EUの軍事力増強を強く主張してきた。そのマクロが安全保障協力からはじき出されておとなしく黙っているわけがない。

 

 

○AUKUSはインドへの福音 2021.9.29
AUKUSの最大の目的はオーストラリアが原子力潜水艦の艦隊を構築することを、米英が支援すること。インドはこの合意を歓迎するするべきだ。
AUKUSは中国の脅威に断固対処するというアメリカの強政治的決意の表れ。中国との間で緊張が高まっているインドにとって自らが参加していようがいまいが中国を抑止する措置は戦略的にプラスとなる。インドはカシミール地方の係争地で中国と小さな衝突を繰り返してきた。
アメリカから原子力推進技術を得ることに成功したオーストラリアが、フランスとすでに結んでいた従来型潜水艦の調達契約を破棄。フランスはこれまで積極的にインド太平洋の安全保障に関与し、懐疑的なヨーロッパ諸国の目を極東に向けさせてきた。それだけにオーストラリアを裏切りと受け止めても無理はない。
インドとフランスの戦略的協力関係は、近年急速に拡大している。その背景はフランスがこの地域に持つ海外領土や海軍基地。インドと提携すればフランスのこうした海外資産を防衛する能力を高められる。インドにはフランスと安全保障面で協力強化することにインセンティブがある。
だとすればインドはフランスから潜水艦を調達する契約を結ぶという手もあり得る。
インドはすでに核大国で原潜の独自開発を進めている。NATOのような単一の同盟よりインド太平洋の有志による重複する複数のミラテラル(少数国)の軍事協力体制を構築したほうが理にかなう。ニュージーランドは核アレルギーがあり、中国の脅威についてアメリカとは意見が異なりをAUKUSに不参加。
AUKUSの成果はアングロスフィア離れに歯止めをかけたこと。ニュージーランド同様、オーストラリアとイギリスも最近まで中国の脅威を軽視し経済的関与に乗り気だった。
中国の急速な近代化とインド太平洋でのプレゼンス拡大に、インドは攻撃型原子力潜水艦への移行も積極的に検討している。インドは1988年と2012年、ロシアから攻撃型原潜をリース、19年には3回目のリースについてもロシアと合意。
アメリカが原潜技術の供与を渋ってきたのと違い、フランスはブラジルの攻撃型原潜建造に向けた技術支援協定に調印している。
インドにとっては原潜を開発しロシアへ依存を減らす手段になる。AUKUSはアジア安全保障をめぐる駆け引きの重要なシフトを示している。
1970年核不拡散条約(NPT)発効以来、アジアの核秩序はアメリカの同盟国が核保有せずアメリカの核の傘に依存することを前提としてきた。だが中国の軍事力が増大し核の傘の信頼性が揺らぐにつれ、核兵器保有という選択肢が新たに議論されている。