暴君からアメリカを守れ 2021.9.28

○暴君からアメリカを守れ 2021.9.28
トランプ大統領の支持者が連邦議会議事堂を襲撃した後、マーク・ミリーが核兵器の発射手順を見直すため高官を招集していた。ミリーは自分がシュレジンジャーの役を引き受けていると語った。ニクソン大統領が弾劾訴追される可能性が濃厚になると、国防長官だったシュレジンジャーは統合参謀本部議長のブラウンに、「ホワイトハウスから異例の指示が出たらまず自分に相談するよう」伝えていた。ミリーは「自分が関与していない限り、誰からの命令も受けるな」と指示した。公式に定められた手順でも大統領が核兵器の発射ボタンを押す前に統合参謀本部議長に相談するよう義務付けられている。ミリーはその立場にあることをはっきりさせようとした。
だが、ミリーの行動は74年にシュレジンジャーとブラウン行ったこととは違う。ブラウンは各軍司令部の大将すべてに「自分とシュレジンジャーの確認を経ない限り、ニクソンからの実行命令には従わないよう」命じていた。これは命令への不服従。ただ愛国心に基づいたものであり、当時の状況下では正当と認められる不服従だった。
一方でミリーの行為は統合参謀本部議長としては大胆だったが、単に手順の遵守を徹底させたさせたかっただけであり、不服従と言えるものではない。

②トランプが正気を失い中国を攻撃するのではないかと懸念したミリーは、核兵器を扱う高官らを招集したのと同じ頃、中国の李作成統合参謀本部参謀長に非公式ルートで電話をかけに2点を確約していた。第一に、ミリーはまず暴動が起きたか否かにかかわらず、「アメリカは100%安定しており、万事問題ない」と李作成に伝えた。
第二に、「アメリカは中国を攻撃するつもりはないがもし攻撃する場合は事前に連絡する。奇襲攻撃はしない」と約束した。
これは事実なら歴史上前例がない衝撃。
ミリーは指揮系統から逸脱し最高司令官 =大統領の方針や意向として自分が受け取ったことを無視すると断言したのだ。さらに大統領が攻撃を命じたら敵の最高司令官に連絡すると約束し奇襲攻撃の利点を自国から奪った。

米軍の最高幹部が今回のミリーのような方法で特定の攻撃への反対や回避行動をとることは望ましいか?
民主主義と指揮系統を重視するなら、ミリーは国防総省国務省など各組織の文民職員を集めてグループを設け、そこから攻撃に反対の声をあげるべきだった。
中国との極秘ルートを開設したのミリーではなくマーク・エスパー国防長官だった。エスパーの狙いはアメリカの攻撃が差し迫っていると見ていた中国を安心させることだった。
ミリーの会話内容は、「もし戦争になる場合にも奇襲攻撃を行わずそちらも先制攻撃を行う理由もない」というもの。これなら奇襲攻撃について中国に事前計画を約束したことにはならない。

大統領はどれだけの権限を権力を持つべきなのか?
大統領が職務遂行能力を失った場合について定めた憲法修正25条の規定を発動するか、少なくとも発動を真剣に検討すべきだった。アメリカ大統領は核攻撃の開始について独占的な権限を持つが、これは大統領は正気だという前提に基づいている。
だがこの前提は憲法の精神に合致していない。アメリカの建国の父たちは連邦政府に立法・行政・司法の3部門を設け、各部門にある程度の拒否権を与えた。やがて大統領に専制君主が選出される事態を恐れたからだ。