揺らぐ南北統一のコンセンサス 2021.10.26

近年、状況や価値観の変化に伴い南北統一に対する人々の思いが変わってきた。その背景には世代交代と政治的イデオロギーの変容がある。伝統的に韓国のエリートは北朝鮮の攻撃的な姿勢に対して愛憎半ばする感情抱いてきた。革新は特にそうだ。彼らは北朝鮮に相手にされなくても友好関係を築こうとした。保守派も北朝鮮に懲罰的な態度を取ろうとしなかった。2010年に韓国の哨戒船が北朝鮮に撃沈された時でさえ当時の李明博大統領は南北経済協力のシンボルであるケソン工業団地を閉鎖しなかった。朴槿恵で も大統領就任早々、北朝鮮のミサイルの脅威に直面したにもかかわらず対話と交流路線を変えなかった。

とは言え調査結果を見ると10年代初めから韓国の人々の北に対する見方は変わってきた。特に若年層では顕著。若い世代の間では民族的なナショナリズムではなく市民的ナショナリズムに基づく新たな国民意識が根付きつつある。若い韓国人は南北統一が自分たちや自分たちの国にとって有益だとは必ずしも考えていない。韓国の保守政党はもはや老人支配ではなくなっている。最大野党「国民の力」の代表は36歳。彼は統一にさほど熱心ではない。青瓦台の左派は「正しい道は平和的な統一だ」と言うコンセンサスにこだわり、政府関係者は記者会見で南北関係が順調に前進していると繰り返してきた。こうした動きは平和的な吸収型の解決から政治レベルで複雑な駆け引きを可能にする。心理戦・戦略的な戦い型の抑止力の向上へとスタンスが変わる可能性を示唆している。

同じ民族であると言うルーツはもはや統一の合意形成の基盤にならない。北朝鮮に対する韓国の態度は、政府が南北関係について楽観的か悲観的かによって大きく揺れ動いてきた。政府の政策が韓国の世論をリードしてきたようなもので、政府が平壌との協力と対立のどちらの政策を追求するかで流れが決まる。