移民受容にEU後ろ向き 2021.12.10

ポーランドでは2015年難民を敵視する右派政党「法と正義」が政権を獲得。司法への介入やメディアへの圧力を強め法の支配をめぐりEUとの対立が激化していた。しかし今回、EUは今回ポーランドに連帯を表明している。ベラルーシが意図的に移民ら送り込んでいるとして、ベラルーシの追加制裁を発動。またEU人道主義的な発言も弱まっている。多くの移民が目指すドイツでは移民難民受け入れに寛容なメルケルが退任。首相に選出されたショルツも流入を阻止するポーランドの対応を静観しており、難民を進んで受け入れる機運には欠ける。ついこの間まで法の支配などをめぐり激しく批判されていたポーランド政府が、EUから絶対的な連帯を受けている。EUが口先で自慢してきた人道的価値観を裏切っている。

 


EU東部国境を越える移民の急増。イラク、アフガン、シリア、アフリカ諸国から。

イラクは2003年にイラク戦争英米軍がフセイン独裁政権を打倒したがその後、シーア派スンニ派の宗派対立が一時は内戦状態にまで陥った。さらに2014年にはISが席巻し混乱が長期化。ISは17年に駆逐されたが、政治腐敗に庶民が苦しむ構図が続く。公務員等の仕事を得るには政治家とのコネが必須と縁故主義が横行している。2019年には経済不振や就職難、汚職に怒る若者中心のデモが起きた。

シリアも深刻な状況。アラブの春を機に民主化を求める市民と弾圧するアサド政権との戦闘が内戦に発展。その後アサド政権は国土の7割を支配。一方トルコが支援する反体制派やクルド人の支配地域も残る。アメリカなどの経済制裁に加え、関係が深いレバノンの経済混迷でシリア経済は大きな打撃を受けた。燃料や電力の不足が常態化。国外へ逃れた市民の中にアサド政権による拘束を恐れて帰国諦めている人々もいる。多くはトルコなどの近隣国で暮らすが、受け入れを重荷に感じる地元住民との摩擦もある。

2021年最も不安定化しているのがアフガニスタンスンニ派タリバンシーア派を信仰する少数民族ハザラ人を迫害した過去がある。同じスンニ派だがタリバンと対立するIS-Kもハザラ人を標的としたテロを繰り返している。