孤立出産での死産は罪なのか(2021.11.26)

孤立出産での死産は罪なのか(2021.11.26)

22歳のベトナム人技能実習生が双子を死産しひと晩安置していた行為が「死体遺棄」とされ罪に問われている。「埋めて隠すつもりだった」という検察の推測で起訴された裁判、一審で有罪判決。控訴審が11月12日に開かれたが即日結審。女性と弁護団、支援団体は逆転無罪を目指し無実を訴え続けている。

 

1.リンさんにとって絶対に妊娠するなと言う管理団体や雇い主は理解ある相談相手ではなかった。

死体遺棄罪とは、「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得」とされており、死体を山や海に捨て2.る、家の屋根裏や押し入れに隠すといった行為が典型事例。遺体を丁寧にタオルでくるみ、弔いの言葉とともに箱に納めたリンさんの行為は、放置ましてや「遺棄」とはとても言えない。

3.検察はリンさんが隠匿したと主張するが、警察がリンさんの自室に踏み込んだとき、大量の出血などはそのまま残っていた。もし隠匿するつもりだったなら、血液も処理していたはずだし、遺体の箱も棚の上に置かず隠しただろう。

4.「遺体を埋めるつもりで」というのも検察の憶測でしかない。日本語も十分に話せない状態で来日し働き詰めだったリンさんが日本の火葬や埋葬の手続きについて知識があったはずもない。

検察はここまで死体遺棄罪の成立を強行する背景には、女性技能実習生が妊娠出産することに対する牽制・見せしめがある。

法務省技能実習制度はあくまで技能を身に着けて持ち帰るための制度で、実習期間中の妊娠や出産は想定していないとしている。人として当然の権利である結婚妊娠出産が許されず、ただ3~5年働いて帰ってくれればいいということ。人権のない技能実習制度は現代の奴隷制


日本人女性でも同様の事例。2020.12大井町のマンションで死産→死体遺棄で即日逮捕。母親である女性だけが実名報道。父親は全く責任を問われず。女性は保護されるべきであり、逮捕ありきでなく慎重に事情を聞くべき(慈恵病院・熊本市)。
この行為が罪に問われるなら、孤立出産に伴う死産のほとんどが犯罪とみなされてしまいかねない。孤立出産の結果死産に至った女性たちが罪に問われることを恐れむしろ遺体を隠す、遺棄するなどの犯罪行為を誘発する。

孤立出産とは医師や助産師の介助を受けず自宅などで一人で出産すること。そこには貧困や性被害など様々な事情がある。婚姻していない女性が妊娠出産することへの差別や偏見、身近に相談する人がいないなどの社会的な問題もある。

一度起訴されてば99%が有罪となるのが日本の刑事裁判。裁判所が検察に追従する組織的構造がある。