アフガニスタンにおけるタリバンの攻勢に関するメモ

○飢餓は現実 待ったなし 2021.11.12

支援上の問題の1つは、海外からの送金が難しいと言う点だ。また職場に出勤できない女性がいたり安全の確保が難しかったりと言う問題もある。以前から脅迫を受けてきた関係団体の弁護士が、出国しようとしたが拒否されたケースもある。

タリバンに対する制裁でアメリカ政府などがアフガン政府の海外資金を凍結したが、これを解決しないと国内経済が回らない。飢餓が現実に起きており、中産階級の家族でも1日1食と言う事例もある。

交渉イコール暫定政権を認めることにはならない。制裁をしていたら人道危機の解決にはならない。タリバンには一定の支持者もいる。現地の人の手でアフガンが変わってほしいと願うのであれば、粘り強く交渉したほうがいい。逆に追い込むと人権侵害をもっとひどくなる。

日本としてどのような連帯が可能か。個人であれば信頼できる国際機関に寄付する方法がある。小規模NGO等、教育分野に関わるなら長期的ビジョンを持つべき。資金を集めて学校運営を始めることができるかもしれないが、先々の運営費は「現地側が自分たちで確保して」では本当の支援が続かない。学校は世代を超えて通い続ける人たちがおり長期継続して支援する責任がある。医療や農業なども同様。

 

 

タリバン中国共産党、急接近の必然(2021.9.21)

中国共産党タリバンの類似点。

中国共産党タリバンは思想の面で本質的に近似している。中共共産主義以外の思想と哲学が中国に根を下ろして大きく成長するのは許さない。キリスト教イスラム教は名目上は存在するが、限りなく共産党の下位組織と化してほぼ原型をとどめていない。古代から存続してきた多くの宗教施設の建国直後から取り壊されている。タリバンも同様で、以前に政権の座についた時はシーア派などの少数派を公開処刑して弾圧した。またバーミヤン大仏を偶像崇拝だとして爆破した。

②ケシ栽培。中国共産党は薬物に加工してモンゴルとライバルの国民党支配地域に転売し、50年まで莫大な軍資金を得ていた。そしてその中毒者が増えたのは支配階級が腐敗しているからだと責任を国民党とモンゴル社会に転嫁した。タリバンの資金もケシ栽培に大きく依存。薬物を異教徒に輸出して欧米社会を疲弊させることを躊躇しない。

③どちらも農村から都市を包囲すると言う戦略で政権を獲得した。ソ連コミンテルンの援助で生まれた中国共産党は当初、上海や広州など都市部での革命活動に重点を置いていた。その後内部闘争経てソ連の影響を削がれ「山奥から誕生した共産主義」が主流となった。タリバンの2度にわたる全土征服は奇しくも中国共産党の成功物語と一致する。アメリカはアフガンの民主化よりもビンラディンの殺害に関心があったようでガニ政権は国民から支持されなかった。気がつけばアフガン全土にケシの花が咲き乱れカブール以外の経済的命脈はすべてタリバンに握られるようになっていた。

 

タリバン政権復活のカウントダウン
米軍の完全撤収→空からの援護や物資供給、情報と偵察、兵器や車両の保守整備、負傷者の後方への搬送、そしてヘリコプターによる迅速な輸送活動もなくなった。こうした支援なしでは米軍の地上部隊はまともに戦うことができない。

政府軍よりもタリバンのほうが自分たちの大義に情熱を感じていて、そのために戦う決意が固い。これに対して、政府軍の兵士をはじめとする庶民の多くは、タリバンを憎み、恐れてはいるものの、政府に愛や忠誠心を抱いていない。
2010オバマ:アフガン増派→米軍幹部はアフガニスタン政府の腐敗を一掃しない限り、増派の効果は乏しいと警告した。だが腐敗問題は放置された。そしてタリバンは腐敗した政府に対する庶民の怒りを利用した。


アフガニスタンパキスタンの国境地帯は昔からテロ組織の温床となっていた。パキスタンは核保有国でありその動向に目を光らせておくべき理由はたくさんある。ガニ:3つの軍事基地を米具に使用許可。
たとえ限定的でも米兵のプレゼンスはタリバンを遠ざけ、女性の権利など市民社会の片鱗を守ることができた。

タリバンが和平交渉に本気で取り組んだことは久しくない。
いっそのこと、バイデンがもはやアフガニスタンアメリカの国益にとって重要ではなくなったから引き上げると言ったほうがよほど正直。それなのにアフガニスタンを守ると言い続けるのはかえってアメリカの国益を傷つける。

 

 

パクス・アメリカーナ、カブールに死す。
アメリカが同盟相手を見捨てるのは、今回が初めてではない。2019年秋にシリア北部のクルド人を見放し、前進するトルコ軍の前に放り出した。シリアという国家の崩壊は、ISによる「カリフ国」宣言とイラクへの勢力拡大を招き、ヨーロッパに大量の難民を流入させた。
中国の利害:アメリカの敗走はその国力の不可逆的な衰退を際立たせ、(台湾を含めて)中国の強権的拡張主義の対象地域を広げることになるだろう。機を見るに敏な中国が鉱物資源の豊富なアフガニスタンに戦略的進出を図り、パキスタンイラク中央アジアへの浸透を強めていくことは確実。

 

 

○日本「やったふり中東外交」の罪
茂木外相「法の秩序に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を確認したい」…これは中東でもそのような国際秩序が尊重されるべきことを前提とした発言だが、そもそも中東はそのような状況にない。2021年オマーン沖で日本企業所有のタンカーが攻撃され船員2人が殺害された。米中央軍の報告書はドローンがイラン製であることを示す証拠あり。日本はイランを非難せず。ここ数年でドローン技術を向上させ中東のドローン大国となったイランは、自らドローン攻撃を実行しているだけでなく、中東各地のテロ組織や武装組織にドローンやその部品を提供し攻撃を代行させてもいる。
2019年日本のタンカーはオマーン沖で攻撃され、このときもアメリカはイランの仕業だと断定したが、日本は一切抗議せず。
タリバン幹部は今回、イスラム法統治を実施すると宣言。またアフガンだけでなく世界をイスラム法によって支配することを目指すとも述べた。
イランはアフガニスタンにも代理勢力を有し、タリバン政権との「外交」を志向。アフガンでもイラン製のドローン部品は発見されている。
日本の常識は中東では通用しない。

 

 

アフガニスタン撤退というバイデンの英断
近年ではアフガニスタン駐留米軍の人的被害はごく僅かだったことを考えると、米軍撤収は明らかにコスト便益を上回る「まずい判断」だ。
バイデンはアメリカの「永遠の戦争」に終止符を打った。これは国家安全保障戦略を練り直し、「テロの脅威」から今日の重要な戦略的課題である「中・ロ・イランの脅威」にシフトするための決断。
80年代にソ連がアフガン侵攻していたとき、パキスタンはCIAから資金を得てアフガンの武装勢力=ムジャヒディン(イスラム戦士)たちを支援していた。
文明の衝突⇔ジハーディストたちを突き動かすのは「私達のあり方」ではなく「私達がやること」だ。彼らの多くは米軍のアフガン占領など特定の行為や状況に抵抗している。つまり彼らは「反乱分子」であり「テロリスト」ではない。タリバンは反乱軍だが米政府はテロ組織とみなしてきた。
ビンラディンを匿っていたタリバン政権はすぐに倒せたがビンラディンが見つからない、このためアメリカのミッションはタリバンの権力奪回を防ぐことへとシフトした。新生アフガニスタンの政府や警察を強化する「国家建設」が欠かせないと考えるようになった。だが米軍幹部と情報関係者らは、野に下ったタリバンの反乱に対して軍事的勝利をおさめることは不可能だと当初から分析してた。同時に、アフガン政府は救いようがなく腐敗しており、アメリカの支援がなければ存続できないと評価していた。

オバマ:「テロとの戦い」という看板を下ろす政治的コストや「アメリカは負けた」というレッテル貼りの可能性から、完全撤収に尻込みした。

バイデン:アメリカはもはやアフガニスタンに重要な国益を持たないと判断。たとえタリバンが権力を奪還してもアメリカの重要な国益は傷つかない。タリバンの目的はアフガニスタンからアメリカを排除することだからだ。

タリバンの本質が変わっていなければ、彼らはアフガニスタンの国内問題に集中する政治をするはず。かつて国際テロリストを匿ったせいで権力を奪われた苦い経験から、再び同じことをする可能性は当面低い。彼らの本質はテロリストではなく宗教的原理主義者。
アメリカはいま、想像上のテロの脅威に基づき国家安全保障を考える必要はなくなった。遠く離れたはっきり言って重要ではない国アフガニスタンを安定させようと必死になる必要はもうない。

 

 

タリバンが目指す国づくり
そもそも政治指導部が現場の戦闘員に望まれぬ譲歩をするとは考えにくい。
すでに戦闘員がデモ参加者に発砲したり女性広告の塗りつぶしなど。
アフガン当局によってうう軍基地内の収容所に入れられていたアルカイダの戦闘員をタリバンはすでに何人も解放している。
子供の勉強を妨げ大人の時間を無駄にする娯楽番組は禁止。20年前にあったイスラム法を遵守させる「勧善懲悪省」が復活しその厳格な監視下に置かれる見通し。
国際社会に受け入れられ認知されるための努力はするだろうが、女性の権利についての話は単なるリップサービス
刑務所から解放されたグアンタナモ基地からの帰還組は西洋に対して悪い思いしか持っていない。

 

 

○過激派に接近する中国の思惑
中国がアフガニスタンに抱いてきた懸念は、地域の不安定化を引き起こすこと、そしてアフガンが新疆ウイグル自治区の反政府勢力への援助基地となったり、中国の抑圧を逃れようとするウイグル人の避難先となること。
しかしタリバンは過去20年間の経験から、テロ集団、特に大国を標的にしかねないアルカイダのような国際テロ組織に避難所を提供しないことを学んだようだ。
中国が望むのは紛争が国境を越えて波及しないこと。中国指導部が恐れていることは、アメリカや旧ソ連のようにアフガニスタンの泥沼にはまること。あるいは事態が思わぬ方向に進んでイスラム主義者の反感を買うこと。そのため中国はアフガンへの関与をできる限り目立たない形で行っている。攻撃的な「戦狼外交」がリスクになる。

 

 

軍隊を派遣しない日本だから可能な対話を(谷山博史)

2020年トランプとタリバンの間で合意が成立したがそこにアフガニスタン政府が加わっていない。しかも合意は和平のためではなく米軍撤退をためのものに過ぎなかった。

アフガニスタンでの対テロ戦争は講和なき戦争であった。有志連合による主要や戦闘が終わった後、ドイツのボンで締結されたボン協定はタリバンを除くアフガンの主要勢力と各国が結んだ協定で、和平協定ではなかった。アメリカにとって対テロ戦争タリバンの掃討戦争だった。この掃討作戦が民間人への被害を広げた。タリバンに対する怒りと同程度、いやそれ以上にアメリカに対する怒りや報復感情がアフガン人の間に生まれていた。

今日日本がなすべきはタリバンとの正規の交渉窓口を作ること。主要諸国の中で日本だけがアフガン本土に軍隊を派遣しなかったし、1人のタリバン兵もアフガン市民も殺していない。日本はタリバンから一定の信頼を置かれており、タリバンと国際社会を仲介する大義を持っている。

 

 

タリバン、新米軍閥、ISの三つ巴内戦化を避けるために(本田雅和 2021.9.3)

大手メディアのセンセーショナルな報道のように、タリバンがアフガン民衆の敵だと見るのは間違っている。8万人とされる戦闘員のほとんどはアメリカによる対テロ戦闘の最中にタリバンに加わった村の若者たち。

そもそも自衛隊法上、派遣先の安全が確保できなければ自衛隊機は派遣できず、安全が確保されている場合は、民間機で救出される方がはるかに安心できる…というのは紛争地で働く者の常識。さらに国際法上も軍用機を派遣するのに派遣先の相手国政府の同意は当然必要だ。国土を実行支配しているタリバン政権は自衛隊機受け入れに同意ところが「外国の軍隊には出て行ってほしい」と明確に反対している。

アフガニスタンは9.11までは国際社会から忘却されていた。国際社会からの無関心の中で放置された国の内部では人権侵害が深く根を張り、米ソから代理戦争のための武器ばかりが供与され内戦が激化。「人権侵害を止めるためには空爆攻撃はやむを得ない」との論調で朝日新聞など日本の大手メディアは侵略を正当化し米軍を応援してきた。

欧米のフェミニストまで動員するキャンペーンが展開。一方で親米の北部同盟軍のイスラム原理主義勢力による女性弾圧に対しては無視が続いていた。

そうした土壌の中で内戦は深化し、2016年時点でタリバンは国土の3分の1を席巻していたが、これも日欧米のメディアはほとんど報道してこなかった。タリバンは「国家再建のため日本人は必要だ、保護するので残って欲しい」という「友好的外交関係の確立」を訴えている。

 

○捕まれば命はない 取り残されたアフガニスタン人の訴え(原文次郎 2021.9.3)

国を脱出するための支援を求める人々はまさに難民そのものだ。旧政権を支えてきた国際社会はこれらの難民の人々を救う責任がある。日本政府は在アフガニスタン大使館員12人をいち早く国外に退避させた。この結果タリバンと交渉して新しい国づくりをするチャンネル・人道支援を継続するための連絡のチャンネルを失ってしまったのではないかと懸念される。

アメリカとともにアフガン戦争に参加し敗走した日本が現地スタッフを救援するのは当然の責務である。

 

○恐怖政権タリバンとは何者か(2021.9.7貫洞欣寛)

アフガニスタンでは90年代初頭全土に無政府上状態が広がって軍閥の群雄割拠し暴力的で強引な統治と勢力争いの先頭切る繰り広げていた。こうした軍閥と違って公然とは賄賂を求めず支配地域では厳格な統治姉ちゃんを回復させた当時のタリバンに対して市民の間では歓迎する声があった。

中村哲医師が繰り返し、「タリバンは狂信的集団ではない。少なくとも農民・貧民層にはほとんど違和感がない」。復古的なイスラム解釈、伝統的な農村の価値観。これらに基づくタリバン流の統治は地方部の男性にとっては違和感が少なくむしろそれが当然と思う人すら珍しくない。

占領軍が支えたアフガン戦争はかつての軍閥の集合体だ。相互対立や悪性などでタリバン躍進の原因を作った軍閥が新政府の座についても腐敗体質を維持し続けていた。アフガン政府には帳簿の上にしか存在しない多くの「幽霊兵士」がいた。タリバンとの戦闘を恐れて逃亡した兵員をカウントしたり、最初から実在しない人員を書類上で偽造をしたりした各地のボスや役人たちが、アメリカなどから注ぎ込まれる資金を懐に入れていた。

 


○アフガン、混迷の元凶は (2021.9.7 新谷恵司)

ムジャヒディンは、アメリカCIAの支援もあり力を蓄えた。その中には独自の軍事訓練基地を作るなどしてアルカイダを設立したサウジ出身のビンラディンもいた。

アフガニスタンは民族も言語もイスラム教発祥の地アラビア半島とは異なる辺境であり、どちらかと言えば世俗的かつ宗教とは直接関係のない伝統・習俗で暮らしてきた部族社会であった。

たとえば女性の権利について。ブルカ着用義務の教義はコーランにも預言者の言行録にもないローカルルール。女性の教育や戸外での活動禁止や強制結婚など、タリバン支配下で予定されているとされる女性に対する虐待行為は、タリバンが実現しようとするところの「イスラム法による統治」では決して許されるものではない。

しかしその主張が間違っていようといまいと、イスラムの名において行動すれば圧倒的な動員力が生まれると言う現象が80年代以降の中東・イスラム世界を席巻した。これに乗じてタリバンは急成長しアルカイダやISといった巨大テロ組織が育っていく。

 

 

 

○空港テロが突きつけた現実(マイケル・ハーシュ 2021.9.7)

共通の脅威に対処するためならアメリカの情報機関が敵性国家とも手を組む。9.11テロ後にはアルカイダ征伐のためシリアの情報機関とも協力した。ISをイラク国内から追い出すためにイランとも手を組んだ。

今回の空港テロでアフガニスタンにおけるタリバン統治の脆弱性が浮き彫りになった。近くに米軍基地が存在せず、信頼できる情報源も無い状況では、いくら最新鋭の無人偵察機を飛ばしても従来のような精度でテロリストの動向を監視することは難しい。

 


タリバンとロシアの危うい友好関係

しばらく前ならロシアおタリバンが手を組むことは想像できなかった。ロシアは1979年にアフガン侵攻し、イスラム主義勢力(アメリカの支援を受けていた)の激しい抵抗にあい、89年に撤退を余儀なくされた。10年間に命を落としたソ連兵は15,000人以上。

しかもタリバンは前回のアフガンの政権を握っていた99年、ロシアの分離独立を求めるチェチェンイスラム原理主義勢力を支援し、ロシアに対するジハード(聖戦)を宣言した。01年にアメリカがアフガンに侵攻してタリバン政権を崩壊させると、タリバンは対アメリカで協力できないかとロシアに持ちかけた。

17年にはロシアがタリバンに武器を供与。

20年にロシアがタリバンに報奨金を払ってアフガン駐留米兵を殺害させているとの情報も明るみに出た。

 

タリバン政権復活の経済的必然 2021.9.14

アセモグル:地域ごとに異なる慣習と規範を持つ国に、欧米諸国がトップダウン方式で国家の仕組みを押し付けようとしたことが裏目に出た面もあった。

原因はそれだけではなく経済的要因が作用していた。所得上昇のスピードの問題。早いペースで経済成長を遂げている国では成長が安定する。経済成長は国内の対立を封じ込める効果を持つ。成長が停滞したり退行したりしていてその期待を裏切られれば社会不安が増す可能性が高い。アフガニスタンは2010〜12年頃までは経済が急速に成長していたが、この時期を境に成長が停滞し始めた。

国内では工業製品がほとんど生産されていないため国内で消費される工業製品はほぼ全面的に輸入に頼っている。0 1年にタリバン政権が崩壊して以降10年間にアフガンの輸入額は10倍近くに増加。ところが10〜12年以降は人口が増え続けているにもかかわらず輸入額の伸びが停滞している。これは国民の生活水準が落ち込んだことを意味する。

アメリカはアフガニスタン国民の生活水準を向上させ続けるのに十分な援助を継続するつもりがなかった。アフガニスタン新政権にとっては輸入を絶やさないことが非常に重要になる。

アフガニスタン旧政権が崩壊した主たる要因の1つが、汚職の横行だった」と専門家の意見は一致。「アメリカが旧政権の汚職を撲滅していればタリバン復活は防げた」

外国からの援助が主な収入源になっている国ではどうしても汚職がはびこる。

 


タリバンとISの長く深いつながり2021.9.14

ハッカニ・ネットワークはそれ自体として世界各国でテロ組織に指定されている上に国際テロ組織アルカイダと長年にわたりつながりがある。

一方IS-Kとタリバンの間には明確な亀裂があると言われてきたがアフガニスタンでは政治勢力武装勢力合従連衡を繰り返してきた。ある時戦闘を交えていた敵敵同士が翌日には相互の利益のために手を組むこと日常茶飯事だ。

いくつものグループが民族や婚姻を通じて複雑につながっておりイデオロギー的な亀裂が永遠の断層線になると事は無い。

ISは当初タリバン直接ダメージを与えようとした。2015年には機関誌でタリバン創始者であるムハンマドオマルがとっくに死んでいることを暴露。タリバン上層部が何年も隠してきた事実だ。

タリバンからIS-Kの人材流出がは止まらなかった。原因はイデオロギーよりもリーダーや縄張り、それに麻薬取引による利益配分に関する不満だった。

2020年IS-Kの武装集団がカブールで国境なき医師団が支援する医療施設を襲撃。米のカリルザドアフガン和平担当特別代表は襲撃の責任はIS|Kにあると述べた。タリバンを非難しなかったことにアフガン全土で批判が高まり、和平交渉を継続するためにタリバンのイメージを重視したのではないかと指摘された。

 

 

○強硬派主導の暫定政権か2021.9.17

タリバンが暫定政権の閣僚リストを公表した、発表された33人の閣僚がすべて旧来のタリバンの幹部で占めめられ、タリバンと交渉を重ねてきた政治家や宗教民族的少数派のハザラ人や女性はいなかった。それだけではなく33人の閣僚のうち17人は国連の制裁リストに載っている人物。そもそもタリバンの幹部たちはもともと軒並み制裁リストに名を連ねていたが、タリバンアメリカがカタールで和平交渉を始める際に交渉の条件として関わるメンバーをリストから外してもらった経緯がある。つまり制裁リストに載っていない16人の閣僚はほとんどがカタール和平交渉の代表団メンバーだ。しかしテロ容疑者としてFBIに国際指名手配されているメンバーもまた今回の閣僚リストには含まれていた。

たとえばハッカニーネットワークの最高指導者のハッカニー氏。アメリカはタリバンと20年間も戦争しながらタリバンの組織自体をテロ組織指定はしていない。しかしハッカニーネットワークに関してはタリバン本体の指揮命令系統から独立して独自に作戦を立て実行していると分析し、国際テロ組織に指定してきた。

このほか国防副大臣に任命されたマズルーム氏も問題だ。彼はタリバン政権を握っていた98年8月政権の国防副大臣として反体制勢力の支配地域に攻勢をかけて占領、その際非武装市民に無差別に虐殺・強姦した。犠牲者の数は推定2000人。タリバンはそもそも腐敗した軍閥から国を救うと言うスローガンで旗揚げし一定の民衆支持を背景に96年2回目の政権奪取に成功した組織だ。政権奪回にあたり公式に「復讐をしない」と宣言したが、実際はアフガン各地で旧政権の職員や協力者の暗殺が繰り返され、タリバン側の戦争犯罪人は免罪され元通りの高位についている。

暫定政権の最終的な内訳を見るとカタールで和平交渉を主導した穏健派ではなくハッカニーネットワークなどの強硬派や武闘派が最終的にイニシアチブを握ったのではないかと推測できる。